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万葉巻19

この巻の始まりは、

4139 春の園 紅にほふ 桃の花
     下照る道に 出で立つ娘子
 
 あの正倉院にある樹下美人図を思い出させる、じつにほのぼのとした明るい情景の歌である。あるいはルノワールの絵を連想する人もいるかもしれない。ここには暖色の幸福が漲っている。

 そして終わりは、

4292 うらうらに 照れる春日に ひばり上がり
     心悲しも ひとりし思へば

 ああなんという憂鬱であろう。空はたしかに晴れてはいるが、しかしその青のなんと閉ざされた空間であることか。

 大伴家持という人の近代的憂鬱。藤原勢力に敗北していく大伴一族。抵抗するすべもない嘆き節。政治的敗北にともなう詩の衰退。

 思い返せば、『万葉集』は、巻一の巻頭を飾る雄略天皇の実にすがすがしい、率直、力、雅、神話的な源泉から溢れる詩情を持って始まり、巻二十の大尾を飾る家持の沈鬱な歌(あらたしき年の初めの初春の・・・)をもって終わる、一つの壮大な物語ではないか。

 そしてこんなことを想像する。
 いつの日か、いまわれわれが「インカ文明展」とか「古代ローマ展」を観るように、後世の人々は「日本展」を観るであろう。

「日本展―神々の国」。入ってすぐには、日本文化の最大特徴としての天皇の説明が書かれ、続いて歴代天皇の御製と事績が、明治天皇の御真影、大正天皇、昭和天皇、そして皇族の御写真が飾られ、滅亡の機縁となった大東亜戦争関係の写真や遺品が並べられ、戦後の猛スピードの変化の写真が貼られ、ガラスケースには、縄文土器や信楽焼から清水焼、輪島塗などの伝統工芸品、『古事記』『万葉集』『源氏物語』から戦国時代の武人や文人の書、浮世絵、昭和二十年の特攻兵士の手記、そして最後に美智子皇太后の和歌集が飾られている。

 そして、映像コーナーでは、能・歌舞伎などの伝統芸能のさわりが上映されており、アジア人が白人に勝った奇跡「日露戦争」、特攻隊の出撃風景、日本の田園風景、神社仏閣、桜や紅葉の名所が、映し出されている。
また、日本庭園を模した茶の湯コーナーで口を潤すこともできる。

 そこで萩焼の茶わんから茶をすすりながら、物珍しいものを観た満足感を顔に表しながら、A氏はつれあいに言うであろう、(もちろん英語で)「滅んだのは残念だけど、それでも島国だったから、あんなに長く古代的な文明が続いていたんだろうなぁ。変質した漢字文化とは言え、日本人はほんとうに言葉遊び好きで平和な民族だったんだな・・・そして近代日本は不思議な文明国だったんだ。」そして退屈そうに付け加える、「まあ、よく判らん点もあるが、なかなか優れていたところもあるんじゃない」と。
 そして出口の売店コーナーで富士山と桜の絵ハガキの二、三葉を買って、外に出る。明るい日差しが照りつけ、木々の緑がA氏の目をうばう。さっき観たものはすっかり頭を去って、つれあいに言う「昼飯どこにしよ」。


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テーマ : 文明・文化&思想 - ジャンル : 学問・文化・芸術

コメント

なるほど、スサノヲ的でしたか!

うたのすけさん、こんばんは!
雄略天皇をスサノヲ的と言われて納得いたしました!
なるほど!そうでしたか。面白いですね!

また、宇佐神宮の蓮の栽培の話は、興味深いものがあります。
今年の天候は、寒暖の差が激しくどの植物の管理も難しそうですが、
来年は、蓮の花咲くといいですね。
お返事ありがとうごさいました!勉強になりました。

なでしこさん


おお、蓮のこと気にかけてくださいましたか。四つのバケツに分散して植えてありますが、概して弱っていて、いちばんいいので直径8cmくらいの葉になりましたかね。花は咲いても来年でしょうね。今春は天候不順で植物全般的にダメですね~。
雄略天皇は近親を次々殺していますが、実に率直で、〈荒御魂〉の典型ですね。スサノヲとともに、〈荒魂〉から和歌が発生してくるのが実に面白いところですね。
かつて「アメリカ合衆国日本州」ということが言われましたが、日本人はjpopやjレジャーにはまり込んで、そのうちアメリカに博物館的に「日本文化」を守ってもらうようになるかもしれませんね~。

うたのすけさん、こんばんは。

今日の記事も、とても面白く読ませていただきました。
(雄略天皇は、人気のない天皇だったと記憶していますが・・・。)
私は、「うたのすけ流視点」で(←失礼だったら、すみません!)
物を見ることは必要ではないか?と思います。
実際、このままいけば、
日本は博物館にしか存在しえないような気がしています。
そうならないように、日本人として頑張りたいと思うのですが・・・。
「何しろ日本国民は、天皇について感心がない。」
今上天皇も、ご自分の存在を国民に主張する事は、
これからもしないでしょうし、メディアが報道しないでしょう。
日本の事は、まず日本人が知らなければなりませんね。
(アメリカ人など外国人ではなく。)
今回は、少し怖い気持ちで読ませていただきました。
私は、英語の勉強もっとがんばります!ははは!
(それから、宇佐神宮の蓮は、元気に育っているのでしょうか?)

No title

はっはっは。ほんに小生はどうも悲観的な空想に陥りやすいですね。まあ、今回は家持の気持ちのせいですよ。

No title

星新一のショートショートみたいですね。しかしこれは、外国人からみた日本人観みたいですね。我々日本人は、日本文化について誇りを持っていますし、将来もそんなに醒めた見方はしないと思いますが。

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