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能とシェイクスピア

 シェイクスピアといえば、先日、上田邦義氏の自作自演による英語能「ハムレット」を観、それについての講演を聴いた。
 そもそも、能とシェイクスピアなんて、まったく水と油でどう考えても混じり合わないと考えていたから、いったいシェイクスピア能とはどのようなものであろうと興味しんしんであった。

 上田氏は先に、自分はどうして英語能などというものをやり始めたかを語った。英文学の専門家として氏は戦後まもなくしてフルブライトで米国留学をされた。そのとき、すでにシェイクスピアの原文の美しさに捉えられると同時に謡曲の詞章の美しさにも捉えられ、シェイクスピアの作品の能化を考えておられたそうである。
 それでまずは、謡曲の節付け、謡い回しをもってシェイクスピアの詞章を謡い始められたそうだ。それをすこし披露されてから、能「ハムレット」を独謡独舞された。

 弱吟の「To be or not to be」でもって始まり、オフェーリアとの愛を回想する。このとき、「葵上」の手法で一着の衣が今は亡きオフェーリアを象徴する。途中で「To be or not to be」が強吟で謡われるのは、巧みだと思った。これは、そのまま、生死を超えるという意味合いで「Readiness is all」(肝心なのは覚悟だ)になってゆく。
 そして後段は、レイアーティーズの剣に倒れるハムレット。「人生は一瞬の夢」が強調され、「Flight of angels sing thee to thy rest」が繰り返され終わる。歌はもう「江口」のキリそのもの。これを聴いていると、ハムレットも普賢菩薩に救われるような感覚に襲われる。

 つまり、氏が述べるように、極端に簡略化されている。まあ、そうでなければ能にならない。

 これを観ていてなるほどと思った。これは能なのだ。じつにうまく能にしたもんだ。だがシェイクスピアではない。(当たり前か)シェイクスピアの悲劇には、エゴイズムをもつ人間のどうしようもない業、人生のどうしようもなさ、そしてけっして救いはない、というものを感じる。
 能にはそのようなものはない。どんな怒りに責めさいなまれても、最後は仏果を得るぞありがたき、となる。

 ところで、氏の講演はしばしば脱線されてのたまわく、「たかだか80年のあっという間の人生を、自分は美しいものだけを見て生きたい」「戦後日本政府が犯した大きな誤りは、非戦を誓い、諸国民の信義を信頼していくという素晴らしい平和憲法を外国にアピールしてこなかったことだ」と。
 なるほど、氏は、昭和天皇の皇太子時代の外人教師だった○○先生(忘れてしまった)に、氏自身ずいぶん影響されたということだ。そして○○氏は、戦後の天皇に平和主義を教えたとも。
  
 小生に言わせると、氏は空想的唯美主義の権化である。それがじつに素晴らしく日本的だと思われた。まさに氏にかかると「ハムレット」も美しい夢幻能になる。ここにはシェイクスピア悲劇の世界はない。

 憲法についてただ一点。たとえ空想的あるいは理想的憲法でも、これが自主憲法であればよい。氏が非難するところの、日本政府が世界にアピールしてこなかったのは、まさにこの憲法が外国人によって創られたという負い目があるからではなかろうか。
 いまからでも遅くはない。自主憲法を制定し、心理的に自立を果たすべきである。



      

             
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テーマ : 観劇・劇評 - ジャンル : 学問・文化・芸術

コメント

No title

kontaさん。コメントありがとう。
まことに融合はありえませんね。能はじつに諸要素が未分化のまま成熟し、いわば独特の総合芸術として完成されてきましたからね。しかし、新作能として題材をここそこから借りてくることは可能かと思います。
ひとつのジャンルならありますね。ラビシャンカールもコダーイもそうかな。ノヴェンバーステップはやはり成功作ですかね。

No title

先程は、武満徹の間違いでした。
平和憲法のおかげで、日本人が自国の領土と主権を守る気概をなくしてしまった事は確かですね。

No title

シェイクスピア劇は観たことありませんが、能とは全く異質なものと思われ、融合したものを観たいとも思いませんね。
邦楽と洋楽の演奏家はよく一緒にコラボをしてますが、武満満のノヴェンバー・ステップスを除いて、あまり成功例を知らないですね。ただ演奏家のほうは、他ジャンルとの交流は楽しいし刺激にはなるでしょうね。

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