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『回想の明治維新』2

 メーチニコフは、大山巌との半年の付き合いで、「パリ大学でやっていたら四年間もかかる日本語の基礎」を習得でき、岩倉使節団がジュネーヴに姿を現した時は、彼らとの会話に苦労しなかったそうである。彼は、ただちに薩摩や長州の明治革命における立場を理解し、岩倉の老獪な人となりを見てとった。彼は、ランボーやシュリーマンのように、放浪力!と言語習得の才をもっていた。

 しかし、そういう彼でさえ、まず日本に来て、日本語の多様性に困惑している。中国語の文体とヤマト言葉との和漢混交体であり、各階層によって独特の話し言葉を使っているし、また男言葉、女言葉があり、それらが対象によってまた違った言い方をする。しかも日本人は話すとき表情に乏しいときている。

 入り口で言う「〈御頼み申す〉この決まり文句は、どんなヨーロッパ語にも翻訳できない。・・・これは〈おーい、貴方、わたしは参っておりますぞ!〉というほどの意味になる。…日本語というものは、ヨーロッパ諸語はおろか、たとえばタタール語やハンガリー語のような同じく膠着語と呼ばれる言語ともいかに異なっていることか・・・しばしば、単語と文章の間の境界線を引くことがまったく不可能にさえなってしまう。一つの単語がまるで別のいくつもの単語を吸い込む力を持っているかのようであり、しかもそこでは各構成要素が省略や変形をこうむり、凡ての品詞の意味の総和というよりむしろ総合したものが、全体の意味になる。それ自体まったくなにも意味しないか、あるいはまったく本質とは関係のない接頭語のしようが日本語では特徴的である。云々」

 明治維新の原因について、彼は、外国艦隊の来航や、また天皇や将軍の対外的処置などよりも、もっと内発的、市民的なものであると感じた。

「遠いアジアの諸民族や事件を見るとき、われわれはきまって因循や停滞といった烙印を押したがるものだが、こと日本の歴史にかんするかぎり、こうした烙印をおすことは断じてできない。少なくとも最近の数世紀をとってみる限り、この国の歴史は独自の進歩と発展を見せており、まさしくこうした国内生活の順調な流れがあったからこそ、この小さな帝国は、天保年間に非常に根底的な政治、社会上の変革を必要とする状態にまでたち至っていたのである。」

 天保と言うと、大飢饉、百姓一揆、それに清国アヘン戦争の報による内外の危機意識が生じたことは確かであろう。ちなみに天保元年に吉田松陰が生まれている。
メーチニコフは、頻発する農民一揆と、天皇権力の復活を推奨する『日本外史』の流布、とりわけ徳川政権側の者までがこれに賛同したことが、維新への一歩だと言う。

 しかしそのすぐ後で、またこんなことも言っている。
「日本にはヨーロッパ的意味での都市住民は、これまでいなかった。この国でプロレタリアートの役割を部分的に担ったのは、エタやヒニンのような虐げられたカーストの人たちだった。そして彼らもまた、自分たちの政治、社会的状況が時代の精神にそぐわないものだということに気付き始めていた。だからこそ天保時代に大塩なる人物は、武器を手にみずからの人権の承認を要求する数千人のこうした虐げられた人々をその指揮下に結集することができたのだ。」
 当時の西欧の革命イデオロギーの付会であり、歴史とはイデオロギーが決して近づけるものではない、ということをあらためて思う。

 しかし、コスモポリタンの彼の目は、すでに徳川時代は西欧を求めていたのは日本であるということがよく見えた。「要するにわが文明が完全武装の軍艦の姿をまとって日本近海に出没し、日出ずる国での市民権を執拗に要求するよりもはるか以前に、日本のほうがヨーロッパを目指していた」
 日本は徳川政権時代、鎖国をしていたと言うが、しかし、それは政権の安定維持のためであって、外国文明から目を逸らしていたのではない、長崎経由に限ってはいたものの、一部の下級武士たちは西欧事情とりわけ医学と天文学の知識を入手していた。
                        
                        
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