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『回想の明治維新』4

 メーチニコフは、日本の植物の多様性もさることながら、日本人の顔つきや体型の多様さは、ほかのアジア人とは違う、どうもいろいろな民族の雑種ではなかろうかと言う。たしかに、日本列島は地理的には南から北から西から人々がやってきて、ここから出ていくことはできない、いわば、風の吹きだまりみたいな場所ではないか。ここが、いろんなものが混じり合う最終地点なのだ。この地理的特徴は人種の特徴を生みだすであろう。

 革命家と言うが、この書にはいわゆる革命家の言葉と思えないような言葉に満ち満ちている。

 「わたしが何よりも驚いたのは、その魅惑的な美しさにもかかわらず、日本の風景には、未開とか原始の匂いがまるで感じられないことだ。たとえていえば、それは幾世紀もかけて血となり肉となった文化の、良いも悪いも知りぬいた素敵な都会女の美しさであった。」

 人は外国に行くと、その固有の文化に驚くものである。メーチニコフは、高崎正風宅に呼ばれたときの驚きをこう述べている。
 主人がまだ帰宅していないのでしばらく待つように言われた。「見たところ主人の書斎兼応接間のようだった。部屋の調度類は純日本風でしかもごく質素だった。アメリカ製のロッキングチエアと皮を張った胡桃材の小さな机、それに二、三脚の椅子、これだけがわたしは今、日出国の有力な開花主義者の家にいることを物語っていた。あまりの落差に私は驚嘆した。ヨーロッパにいた時の彼らは大変な成り金のように見えたものだが、母国では全く昔気質の地主のような生活をしているではないか!
ここでわたしが昔堅気の地主などという表現をしたのには、それなりの理由がある。極度のあけっぴろげと単純素朴さという点で、わたしにはロシアのステップ地帯のある鄙びた地方の長閑な生活が思い出されたからなのだ。だがそれと同時に、ここには深く血となり肉となった幾世紀にもわたる文化の痕跡がとどめられている。たとえわれわれの尺度とはちがうにしても、無数の人目にはつきにくいディーテールが、この国の人々の知的生活のレヴェルを如実に物語っていたのである。」

 だがやはり、こういうことも書き洩らさない。
「高官の態度は非の打ちどころのないほど礼儀正しかった。懇切丁寧なほどだった。だがにもかかわらず、かれの応対ぶりは、同国人(その多くは、彼におとらず政府の重要なポストについていた)との交際で、後にも先にも出会ったことがない何かが感じられたのだった。」

 彼は「神道では正邪の観念は浄・不浄の観念に置き換えられる。不幸や病気、とりわけ死や死体との接触は不浄なものとみなされ、かくてある種の職業に携わる人々は社会から排斥されたカーストを生むのである。ひとたび穢れた死者は、不浄な物の〈払い清め〉の助けを借りて清められるのがふつうである。神道のいたって単純な儀式的側面は、この祓いあるいは浄化作用に尽きるといってもいい。」

 しかし、彼はブルーノ・タウトとは違って神社の簡素な美を理解しなかったようである。「もっとも有名な神社ですら、行ってみればなんのことはない、白木でできた全く粗末な納屋といった風情で、そこにはなんの美的要素も、建築上の特徴も装飾もありはしなかった。」

 「世界広しと言えど、日本人ほど演劇好きな国民はまずあるまい。・・・日本の戯曲は、例外なくメランコリックで、哀調を帯びた要素が加味されており、ロマンティックな色彩があまりはっきり出ているため、いわゆる悲劇(tragedie)とは異質だからだ」

「(歌舞伎の山場では)大きな音こそ出せないが、すべての三味線がいつもきまって静かで沈鬱な旋律を奏で、それが役者の声音と見事に調和して、独特の魅力をかもしだす。」

 まあ、いろいろと引用紹介したいところはあるが、きりがないからやめておこう。

この書の総体的な印象。

 彼は画家志望でもあったというにふさわしい目で、好奇心の赴くままあらゆる領域を観た。

 西欧の革命の概念を頭に、喜び勇んで明治革命を見に来たのだったが・・・。たとえば、大塩平八郎の乱には「みずからの人権を要求する・・・虐げられた人々云々」「下級武士たちの経済状態はますます悪化していって、無為徒食の生活を送っており、百姓たちを睨みつけていた」というような書き方をする。しかし他方、どうも日本の革命は日本独自の歴史の上に成り立っており、この国の歴史をもっとよく深く知りたい、と感じている。そのところが小生には面白い。


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