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勾玉考1

 この二年くらい、時々頭に浮かんでくるものの一つに勾玉がある。とくにあまり色の濃くない透明度の高い瑪瑙のものがイメージとして浮かんでくる。今朝も夢か現かの境にそれが浮かんできた。

一昨年、出雲大社を訪れた時、その隣にある古代出雲歴史博物館で見た、それは美しい翡翠(ヒスイ)と瑪瑙(メノウ)の勾玉を忘れることはできない。出雲はすでに弥生時代から勾玉の一大生産地であり、―何と言っても出雲には〈玉つくり〉という地名があるくらいである―、今なお毎年、出雲から天皇家に新しく作られた勾玉が献上されていると聞いている。

 玉つくりで思い出したことだが、出雲に行くなら玉造温泉で泊まろうと思い、ネットで一番大きな温泉がある宿を予約した。大社などを観て、ようやく暗くなり始めたころ宿に着き、さっそく温泉に浸かった。たしかにプールのように大きい。誰もまだいない。気持ちも広々と大きくなってとりあえず泳ぎまくった。この温泉は、男湯と女湯の入口こそ別々であるが中はこのプールで一緒になっている。これは僥倖だと思い、のぼせないように岩の上で休憩。湯気の所々がライトで照らされた闇のなか、薄眼を開けて待つことしばし、おっ、女性方から誰か入ってくる。ゆっくりこちらに向かってくる。心臓が打つ。と、男側からも誰か来る。・・・なーんだ、おじいさんとおばあさんだ・・・。二人は小生の休んでいる岩のあたりに来た。暗いが顔は判る。無言であいさつをする。二人は並んで胸元まで浸かり、ぽつりぽつり旅の話を始めた。老夫婦だ。小生は洗い場に行って、またこの岩に来た。まだ二人は岩のあたりで並んでいる。ときどきおじいさんが小声で話をもらしている。・・・

・・・そのとき、じわりっと感動がやってきた。いったいこの老夫婦の、何と言うか、安らぎ感と言うのか、長年連れ添ってきた安定感、何事が起こってもぐらつかないような、一つの溶け合った根から生え出た二本の巨木のような、自然の大地にしっかり根をおろした安定感、これは何だ!というような感覚に襲われたのである。

 この安らかさ。あらゆる野心もあらゆる落胆もその前では恥じ入らざるを得ないような完たき自然的充足。一切の瑣末事の消去。小生は、謡曲『高砂』にいわゆる老松の伝説の由来が明らかにされたときに続く、あの有名な祝言「四海波静かにて、国も治まる時つ風、・・・」の根本義が解ったような気がした。

 その後、時を経て、その印象は、小生などがいくら憬れても決して近づけないような、しかし戒めの力の一点として記憶の中に座を占め、輝きを放っている。

 勾玉に話をもどそう。
 縄文時代にすでに人々は、動物の牙や骨あるいは粘土などを利用して、装身具を作っている。アフリカやアマゾンの土人など、新石器時代を生きているような人々がアクセサリーをしていることからも類推されるように、われわれを含めあらゆる人種が、言語を含め人間としての特徴を見せ始めたその時から、おしゃれは始まったと思われる。

 しかし、それはわれわれ現代人が言うおしゃれというばかりではなく、呪術的な意味、たとえば邪悪な物から身を守るという意味合いが強かったのではないだろうか。つまり、今の諸概念から言うと、もっと未分化な方略であったであろう。そして今でも、おしゃれをする自分の心理を分析してみると、いわばその残響を感じないであろうか。

 縄文時代には、耳飾りや首飾りと思われるいろいろな形のものが、遺跡から見つかっている。北陸地方では、やはり翡翠製のものが目を引く。弥生時代になると、大陸や半島の影響からか、1cmくらいの長さの管玉を連ねた形が多くなったようだ。

 弥生時代から古墳時代にかけて、出雲地方が圧倒的産地になり、したがってここで採れる碧玉、瑪瑙、水晶が中心的玉となって、豆形やそろばん形も多くなり、大和王権のあったと思しき地方でも生産されたが、ここは間もなく衰退したらしい。

 仏教が伝来したころ、大和王権は石製からガラス製や金属製を好むようになったらしく、律令制の整備と共にいわゆる古墳時代が終焉を迎える。それとともに玉の生産も終わりを告げたのであった。以後は奈良時代になって国家的祭祀や寺院の鎮壇に必要な物としてのみ(?)玉を使用したらしい。
 
 で、小生がもっとも気になるのは、あの勾玉の形である。縄文人から平城京までの、いろいろな素材や形の玉を、写真でつらつら眺めてみていると、基本的に現代のネックレスやブレスレットや数珠と変わらないのだけれど、ペンダントにあたる部分や所々のポイントは、やはり曲がった玉(勾玉)なのである。

 縄文時代にランダムにいろいろな形が作られたうち、生産拠点が出雲になるにつれ、この曲がった形が珍重されていったのではないだろうか。それは、出雲という土地と関係しているのではないだろうか。
 つづく


                
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