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『枕草子』2

清少納言は雪がとても好きだった。雪に言及している段は数えてみると8か所はある。それにひきかえ雨の日は憂鬱でもあり、好きな催し物も台無しにしてしまうので嫌いと言っている。

 とりわけ清少の目に快かったのは、雪の積もったところで、男たちの衣服の青や紫などが、雪の白さに映えている美しさ。雪にぬれるとさらに趣があるだろうとも言う。たとえ六位の(ぱっとしない)深緑色も雪に濡れれば悪いものではなかろう・・・。(243・271)

 高校の教科書か参考書なんかで出でてきた有名な、「香炉峰の雪はいかならむ」と仰せらるれば、御格子上げさせて、御簾を高く上げたれば云々(278)を読むと、朝の明るい光に照らされた眩しい雪景色が記憶のうちに鮮明に蘇ってくる。

 またこんな記事も。清少の真骨頂だと思うが。(91段)

12月10日過ぎに雪がたくさん降り積もった。女房たちは、これで雪の山を作ろうということで、大勢の人を集めて山を作らせた。中宮さまがこの雪山がどれくらいもつであろうとおっしゃった。女房たちは、「まあ10日くらいでしょう。」と答える。中宮さまは清少に尋ねる。清少は「1月15日まではもつでしょう。」と答えた。

中宮さまは、そんなにはもつはずはない、とおっしゃる。他の者たちも「12月いっぱいももつまい。」と口々に言う。皆がそういうので、清少も内心、自分はちょっと長く言い過ぎたかしらと思うものの、いったん言った以上引っ込みがつかず、1月15日を押し通してしまった。

20日ころ雨が降って山が小さくなる。清少はこの山を消さないように観音様の祈りに祈る。その御蔭か小さくなったものの、消えずに年を越した。あまつさえ元日早々新たに雪が降った。清少は大喜びするが、新雪は(約束違反だと言って)掻き捨てられる。そして女房たちは7日まではもたないだろうと言い張る。

ところが急に三日の日、中宮さまが、ここ(職の御曹司という所)から内裏へ入御されることとなった。自分も含め女房たちも御供しなければならない。雪山消滅日を見届けたいと思っている皆はとても残念がる。

そこで清少は、木守という土塀の外に廂(ひさし)を置いて住んでいるホームレスのおじさんに(大内裏内には宮廷人と顔なじみになって、おこぼれを頂戴している乞食が沢山いたようだ)、「この雪山を人が踏んだり蹴散らしたりしないように、しっかり見張っておくれ、不審者がいたら、それを制して報告せよ、15日までもったらたんと御褒美をやるよ」と、果物や何かを手付けとして渡しながら頼んだ。

7日の日に、いったん里に帰った清少だが、雪山のことが気になってしようがない。毎日早朝から何度も使いをやっては見に行かせる。10日はまだ1メートル位あるというので大喜び。しかし13日夜、大雨が降る。ひょっとしてこの雨で消えてしまうのではないかと思うと、じっとして居れない、夜も眠れず溜息をついている。周りの人もそんな清少を見て、気違いじみていると笑っている。

もう一日なんとか持ちこたえてくれと祈りつつ、下仕えの者を無理やり起こして見に行かせる。帰ってきて言うには、木守は人を雪山に寄せ付けず、しっかり見張っていて、「明後日までもつだろう、たんと御褒美をいただける。」と期待に胸を膨らませていたと。

 この報告に清少ほくそ笑みつつ思う、明日早朝、残りの雪を容器に入れ、歌を添えて、中宮さまに差し上げよう、と。矢も楯もたまらず、まだ暗い時刻に使いに容器を持たせて雪を取り行かせる。

 ところが、使いは空の容器をぶら下げて帰ってきて言う、「雪なんかぜんぜん残ってなかったっすよ」。清少、唖然として一瞬パニックに陥り、うわごとのように一人ごつ、「一体どうしたことだろう、まだ充分あったはずだが・・・あれは夢だったのか・・・」。使い、「木守は御褒美がいただけずに終わってしまって残念至極とうろたえておりました。」

 そこへ宮中の中宮さまからの御伝言、「雪山はどうであったか」と。清少、悔しさに耐えられぬ御返事「みんなは初め新年まではもたないと言っておりましたが、つい昨日まで残っていたのです。しかし、今朝なくなっていたのは不審です。誰かが取り捨てたのではないかと邪推したくなります。」

 一月二十日、清少は参内し、そして一部始終を皆の前で述べた。すると中宮さまは、意外なことをおっしゃった。実はねぇ、14日の夕方、男たちを行かせて、雪を取り捨てさせたのだよ。私は本当に罪なことをしたもんだねぇ。木守の老人は、そんなことしねえで下さいと一生懸命頼んだけれど、このことを誰にも言うな、言えばお前のあばら家を打ち壊すぞと脅して黙らせたのだよ。さあ、総てを告白したからには貴女の勝ちですよ。貴女が雪と共に私にくれようとした歌をここで披露して下さいな。女房たちもそうだそうだ口をそろえて言う。

 清少、今このお言葉を聞いて、そんな気持ちになれるか、と反撃するのがせいぜいのところ。もう、とても情けなく、泣けてきそうで、落ち込むこと限りなし。

 いつもは、清少の目には、定子中宮さまは、人格、容姿、立ち居振る舞い、心配り、センスの良さ、あらゆる点で、目も眩むばかりの人と映っていたのだが、そういう中宮さまのこのようなちょっとしたお遊びのために(意地悪が日常茶飯事の宮中女世界ではこんな程度のことは別にどうってことはない)どんなに落ち込んだことか・・・。



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テーマ : 日本文化 - ジャンル : 学問・文化・芸術

コメント

No title

umama01さん。もう立冬とはね・・。
まあ千年ぐらいでは人は変わらんでしょう。
しかし、きっと暇ってことはないと思いますよ。つまり、詩歌を覚えたり、あのような遊びに夢中になったりで忙しかったのではないでしょうか。

No title

平安貴族って暇で……そして平和だな~って分かりますよね……。
と言うか、人間って千年の時を経ても成長してないんですね。
知ったようなことを言って、取り繕い、そして失敗する。。。
あ~。
身に覚えが……

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