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後鳥羽院と定家1

 田渕句美子著『新古今集 後鳥羽院と定家の時代』という本を読んだので、今回はこれを紹介しよう。

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 後鳥羽天皇は高倉天皇の第四皇子として、治承四年(1180)に生まれた。この三年後の寿永二年には、平家一門は安徳天皇を伴って西海に渡っている。
 そして、後鳥羽天皇はわずか四歳で、三種の神器なしで即位した。

 十九歳になった後鳥羽天皇は、四歳の土御門天皇に譲位し、上皇になって、思いのままに羽を伸ばした。後鳥羽上皇は、何にでも興味をいだき、熱中する質であった。

 和歌に関しては、天皇時代に詠った形跡はなく、正治二年(1200)、二十歳にして近臣たちと歌を詠み始めたと思ったら、その夏には唐突に百首歌(歌合)を催すと発表。この『初度百首』の作者たちは、後鳥羽院その人をはじめ、親王、内親王、大臣、天台座主ら、様々な身分の者を加えるという画期的なものであった。

 ここで、後鳥羽院は家定の和歌に魅了される。たとえば、

 梅の花にほひをうつす袖の上に
    軒もる月の影ぞあらそふ

 馥郁たる香を放つ梅が夜の中に浮かび、その香が涙で濡れた袖に移り、そこに屋の軒端から漏れる月光が宿り、梅の匂いと月光がまるで競い合うかのように袖にうつり混じり合うのを「月の影ぞあらそふ」と表現した。人の生身の姿は消し去り、感覚を重層させる耽美的空間を作りあげた。このような歌に後鳥羽院は芸術的興奮を覚え陶酔した。

 これ以後、院は頻繁に和歌会を催し、院自身も猛烈なスピードで上達していった。一年後には、空前の〈千五百番歌合〉を催すに至る。歌合は一つのテーマに一対の和歌をおき、どちらが勝ちか判定する、右勝ちとか左よしとか、後鳥羽院は和歌で勝敗を判じる文句の工夫を凝らしたりしている。たとえばこんな判歌のかたちで、―

   六百三番 左勝

 なく鹿の声に目覚めてしのぶかな
    見果てぬ夢の秋の思ひを  前権僧正

    右 

 たづねても誰かはとはん三輪の山
    霧の籬に杉たてるかど    雅経

    院判歌

 のぶ夢つがつさめぬの月
    わたる山の々の秋風 

 つまり左僧正の歌が勝ちであると「しかぞよき(鹿ぞ良き)」と、フレーズの頭の語で言っている、しかも、元の和歌を、さらに展開させて詠みこんでいる。歌会を始めて二年もしないうちにこんな芸当を可能にした後鳥羽院の才やいかに。

 そうして、その半年後には『新古今和歌集』の撰進を、定家、家隆らに命じ、しかも同時に、頻繁に歌会を催している。和歌所には多数の書写役、校合係、目録作成係らがひしめき合い、食事もままならぬほどもう大変な騒ぎであったらしい。三年後、大急ぎで『新古今和歌集』奏覧、竟宴(竟宴とは、天皇親撰の宴を示す意味)

 しかし、何と!その明くる日から、さっそく後鳥羽院は『新古今』の切り継ぎ(改訂)を命じ、以後頻繁に行われる。和歌所の役人たちは、今のようにパソコンのない時代、このたび重なる切り継ぎには、うんざりしたことであろう。

 定家も日記『明月記』に後鳥羽院に苦々しい思いをぶちまけている。「仰せによりまた新古今を切る。出入り、掌を反すが如し。切継ぎをもって事となす。身において一分の面目もなし。…」こんなことが六~七年続いたらしい。


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テーマ : 詩・和歌(短歌・俳句・川柳)など - ジャンル : 学問・文化・芸術

コメント

No title

umama01さん、大変苦労したのですね。小生は幸いにもそれほどの斑気の上司はもったことはありませんが、猪突猛進の仲間といっしょに仕事をしたことがあります。彼女の尻拭いに奔走しまくり。現物の尻でも触ってやったらよかった(笑)。まあしかし、何事も多少はお互い様でしょうね、そこをなんとか上手くやりくりしていくのが仕事の醍醐味ってものかもしれません。

No title

才覚ある人間は周囲を振り回すのが常とは言え……
上司の言葉で仕事を二転三転した覚えのある身としては、歴史の点数を取る記号でしかなかった藤原定家に対し、ちょっと同情を覚える次第。。。

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