スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

ディキンソン著『大正天皇』6

    

よく裕仁(昭和天皇)と父嘉仁(大正天皇)が対照的な存在として扱われることに対して、著者はそうではなく、息子は実に親から多くのものを受け継ぎ、それを踏襲し、同じイメージをつらぬいた点を強調している。今までに有り得なかったご大葬で、大正天皇の陵墓は東京から44 kmも離れた南多摩に作られたが、一般公開期間は2度も延長され、参拝者数は89万人にのぼったという。

それでも、大正天皇の陰が薄くなったのは、ご大葬の年、1927年(昭和2年)は、偶然にも明治の還暦の年であって、かねてより明治天皇を祭るべきところが東京にあるべきとの声があり、「明治大帝の御聖徳」や「明治時代の大業」を記念すべきという声があがってきたことが大きいと著者は言う。

そしてまた明くる年は父天皇のイメージ(国際交流、経済発展、一夫一婦、家庭、皇室と人民との接近)を受け継いだ昭和天皇の御大礼である。「御幼少時脳膜炎様の御症状」という噂は風にのって広まっていくと同時に、新天皇への期待が高まっていくのは自然であろう。

そうして、国際環境も変わり、とくに満州事変(1931年)以降は、平和日本=協調外交よりも、「明治を日本独特の精神の象徴として持ち出してくる」ようになった。〈平和日本〉のシンボルであった大正天皇の功績は忘却の彼方に沈められていった、とは著者が語る所である。

「大正天皇を皇室の典型と考えたとしたら、皇室の歴史、いや近代日本そのものの歴史にまったく異なる色合いがつく。日本の近代皇室がヨーロッパにおける世界主流の皇室と似たような歩みをしているのが明らかになり、近代日本史の流れも一般の世界史の中により〈普通〉に見えてくるのである。」と終わりに述べている。

日本人の内部の人間として、日本の皇室は他国の皇室とは違うと感じる点を除けば、著者の言っていることは理解できるし、ほとんど共感したい。しかし、著者は大正天皇と〈あの時代〉とをあまりに一致させようとするために、かえって大正天皇の個人としての心のうちを無視することになりはしないか。

平たく言えば、大正天皇は天皇として思ったことをしたのであろうか。
それはつまり、天皇はそれぞれ生きた生身の人間であるからには、われわれと同じように心のうちがあるであろうし、そうなればその心を忖度してはいけないであろうか、という問い惹起する。

天皇は神聖にして触れてはいけないとは思えない。それどころか、もはや天皇とは、あえて言えば、一つの職業であって、この職業に携わなければならぬ人は、どういう御覚悟で、どういう御心もちで生きておられるのだろうと考えてはいけないのだろうか、と小生はこの書を読んで思った。


 にほんブログ村 歴史ブログへ
にほんブログ村 
歴史 ブログランキングへ 
関連記事
スポンサーサイト

テーマ : 歴史 - ジャンル : 学問・文化・芸術

コメント

No title

umama01さん。信念がお強いですね。
職業と言って語弊を招くならお仕事と言いましょう、でもあらゆる職業は金銭に還元できない価値があると小生は思いますよ。天皇のお仕事の最も大事なものは、新嘗祭に代表されるような行為ですから、天皇は日本民族の総代・・・、まあ何と言っていいか分かりませんが。
まあ歴代天皇の中にはいはいろいろな方がおられたと思いますよ。ご自分の道をしっかり自覚して乗り越えておられるということでは、今上天皇はじつに尊敬に値すると思います。

No title

私は天皇という座を職業というよりは道のようなもの、と考えております。
空手道とかが一番分かり易いですが。
金銭的代償を超える深さで人生の全てを「それ」に捧げ、頂きに到達するために延々と歩き続けなければならない道。
そのために支払った時間や痛苦、鍛錬などの代償が多ければ多いほど人の畏敬を勝ち取れるのだと。

だからこそ、人生全てをそれのみに捧げている天皇陛下という存在に対しては、自然と頭を垂れ敬意を表すべきである。
……というのが、私の考え方。
しかもその人生を捧げている対象が、我々日本人のためなのですから、陛下に向けて頭を上げられる訳がない、とも。
信仰心よりも技術や修練なんかを好む私なりの、天皇陛下への敬意を表現すると、こういう形になってしまいます。
異論はあるかもしれませんが、敬意の形は人それぞれということで。。。

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー) URL

プロフィール

うたのすけ

Author:うたのすけ
世の中の人は何とも岩清水
澄み濁るをば神ぞ知るらん

最新記事
カテゴリ
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
FC2カウンター
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。