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メソポタミア粘土板2

 東北大震災のとき津波が街々を襲っている映像を思い出して、想像してもらいたい。もし、あれが紀元前5000年に起こっていたら、その時われわれはどう感じ、その後どう語ったであろうか、と。もちろん、文字はない。ましてや写真やカメラもない。大洪水が目に焼き付いて、そのときの恐怖と絶望感が深く心にのこるだろう。そして百年経ち、二百年経ち、千年経ちするうちに、われわれは物語するであろう、例えば、地底に眠る巨大龍が、時々は根返りして大地を揺らすが、この度は目を覚まして大暴れ、そして海のはるか向こうから大波を立ててやってきて、木々を倒し、人々を喰らい、辺り一面を壊滅させてしまった・・・、などという神話を生むであろう。

 聖書のノアの箱舟の物語とあまりにも似ているメソポタミア粘土板の物語から、あの地域の太古の人々に共通の核となる出来ごとがあったのではないか、という話があった。つまり忘れられない大洪水の記憶が人々の心ふかくに続いていたのではないか。

 聞くところによると、一つの仮説として、黒海に起こった大洪水。1990年代に行われた黒海の調査によると、近くの海底には古い海岸線の跡があった。海底には古代の家の柱と思われる人工物が散乱していた。そして海底の泥は二層あって、深い方の泥に含まれていた貝殻を調べてみると、この貝は淡水でしか生息しない貝であった。

このことから、大昔おそらく紀元前6000年ころまでは、黒海は淡水の湖だった。そして、その前から続いていた地球温暖化によって海面上昇がおこり、ついに今のイスタンブール辺りで決壊が起こり、地中海の海水が、どっと黒海に流れ込んで、黒海を広げると同時に多くの集落を根こそぎ流してしまった。もちろんボスポラス海峡もその時できた。その水量たるや、一日に何万トンか知らないが、それが何日も続いた。

このときの洪水が、恐怖で怯えた古代人の口から口へ、世代から世代へと、伝承されていった。千年経ち二千年経ちして、文字を発明した人たちは、物語にその大きな記憶を書き留めた。

もう一つの仮説として、大洪水はメソポタミア地域のチグリス川、ユーフラテス川によく起こっていて、大洪水と思われる地層の跡があるとのことであるから、こちらの大洪水の記憶が物語の起源かもしれない。

旧約のノアの箱舟の着地点であるアララト山が今のそれであれば、こちらの川説が有力かとも思うが、かのアララト山が本当にこれかどうか…

それで、思い出される話がわが国にもある。それは『出雲風土記』の中の〈国引き神話〉だ。ネットでも読めるから、是非読んでもらいたいな。これは実に美しい文章だ、もし小生が有名な先生だったら、「声に出して読みたい日本語」のベストスリーにあげるな。

 これは要するに、出雲の神である八束水臣津野命(やつかみずおみつぬのみこと)が、初めに創った出雲の国が小さすぎたので、もっと大きくしたい、それで、朝鮮半島の一部や、隠岐の島、能登半島の一部を切り取って、ロープに結んで、えんこら引っ張って、元の地にひっ付けた、そのときに宍道湖(しんじこ)や中海ができた。

この話は、今から8000年前~6000年前に起こった温暖化による海面上昇(縄文海進)ののち、4500年前くらいのとき、寒冷化によって海面低下が起こり、島根半島ができた。この出来事が比較的早く進行したのだろうか、人々の心に残り、何千年と口移しで伝えられて、このような神話を生んだとも言われている。

今後、地質学的調査が進んでいろいろなことが判ってくるだろう。けれど、小生思うに、一番重要なことは、神話や伝説の背後にどのような驚くべき事実があったかではなく、その地域の人たちが、大災害のような圧倒的な出来事に直面して、いかなる経験をしたか、言葉を換えて言えば、いかなる物語を生みだしてきたかが、重要であり、また面白いことだと思う。



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テーマ : 神話と現象 - ジャンル : 学問・文化・芸術

コメント

No title

株の投資さま。また来てください。

No title

とても魅力的な記事でした。
また遊びに来ます!!

No title

小生はできるだけ多くの場合にcreativeないわば力に感動したいと願っているのです。

No title

 ……そうですねぇ。
 単に力点の違いだけで、文化財の価値を重視することに異論はありませんので。。。

 ついでに言うと。
 私は何故彼の家が貧しかったのか。
 王侯貴族に搾取されていたからさ。
 だからこそ、この詩は常に身分制のカタルシスに満ちているんだ、HAHAHA。

 ……と、何故か通販番組のノリになっちゃいましたが、そういう背景を知るのが好きだったりするんですよねぇ。。。
 ちょっと性格が捻じ曲がっているのかもしれません。。。

No title

umama01さんは、つまり謎解きの面白さのことを言ってるのでしょうか、もちろんそれは解ります。キリスト教の背景には、ユダヤの民の長年のいじめられ体験があり、コーランの背後には砂漠で生き延びる必要があった、ことはよく解ります。
小生の言いたいことは、「なぜ彼は、こんな素晴らしい詩を作ったのか? 彼の家は貧しくて、頑張ったからさ。」というのは、原因の一端として当たっていても、あまり面白くないということです。
まあ、どこに力点を置くかの違いみたいですね。
ついでに言いますと、結局古典といわれる作品は原因の総計を超えている、と思います。

No title

残念ながら私は真逆で、神話の裏の物語を解き明かしたいタイプだったりします。
その事実を理解した上で、神話を読み、その背景を含めた世界観を理解するのが好きな人間なのです。
その所為か、キリスト教やイスラム教などは、全て教えの裏を考え、どういう背景があったからこう教えられている……なんて考えを巡らせたりします。。。

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