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『遥』石垣さだ子歌集選 その二

昭和17~18年ごろ。石垣さだ子は南方にいる夫を想はない日はなかったであろう。

苦しみは一人堪へよと静かなる初夏の空の月の輝き

濃緑の中に一輪ま白なるあやめ咲きゐて庭清々し

南の国より来たりし燕なれど背子の生活を聞くすべもなし

我が心せめて安くと願ふ背の御心ならむ短き文は

ぬばたまの海に戦ふ背子の身を風強ければ一入思ほゆ

大いなる功の蔭に尊き命いくばくあらむといよいよ悲し

〈昭和十八年五月 アッツ島玉砕す〉

国内は燃えに燃たり同胞の仇討ちやまむと一億こぞりて

沿線に田植ゑに励むあまたあり増産の声やかまし日頃

戦のさ中にあれど風もなき田の面にうつる空美しき

夏深む空に黒々編隊の通りすぎるを祈り佇む

遥かなる南に病みて臥すといふ便りを見つつ我が胸痛む

松風の騒ぐ海辺に憩ひ来て雲の果なる夫を想ひき

思ひ出の路なつかしみ車窓より見やれば街に夕焼けの降りる

童べの遊び事にも戦ある国を思ほゆ日頃なりけり

嫁ぐ友と楽しき想ひ出にせむと秋の一日を山に遊びぬ

上り来し峠の道を友どちと見やれば風の快く過ぐ

風吹けば空に祈りぬ月見れば月に祈りぬ夫安かれと

打続く黄金の波のつくあたり一群赤き彼岸花咲く

おごそかに山暮れんとす現身の我に何かをさとすが如く



                     
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