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ソクラテスの弁明

  

S 人はなんのために生きているか? この問いが欠けている。
O いや、だれでもそんなこと考えている。
S 君の言うのは、肉屋はいかに多くの客に肉を買ってもらうかとか、月給取りはいかに多くの月給をもらうかとか、そんなことだろう。
O いや、そうとも限らない。肉屋はいかにいい肉を客に提供できるか、月給取りはいかに自分の仕事の内容を発展させていくか、そういうことを第一に考えている人もいる。
S しかし、彼らは他のことは何にも知らない。
O 他のことを知る必要なんてあるの。
S そこなんだ。人生で一番大事なことはなにか、彼らは考えようとしない。そこで私は彼らにそれを考えさせようとしてきた。
O それは余計な御世話だよ。
S だから私は嫌われる。だけどさ、私に言わせれば、それは余計なことではない。人間として生まれたら必須のことだ。
O では訊くが、君は何のために生きていると考えているのか。
S 何のために生きるのかを考えるために生きている。
O なんだそれは。抽象的な男だ。
S だから私はうっとおしがられる。分かりやすく言うと、いろいろ考えたのだが、結局、人はみな善のために生きるべきだ。
O 善とは何だ。
S 善とはよいことだ。
O よいことを善というのとちがうの?
S そうだけどね・・・あれこれのよいことのよいことたるゆえんの理念を善というんだ。
O そういうことにしておこう。それで何が言いたいんだ。
S 私は人に遭うごとに、善を目指して生きているかどうか尋ねる。
O おせっかいだね。そんなことをいちいち考えている暇人はめったにいないよ。
S しかし、なぜか若い人は、私の言うことに納得して、ついてきてくれる。
O 暇だからだよ。彼らも仕事をしなきゃならないようになったら、そんな善問答はしなくなるよ。
S 仕事をするようになってもついてきてくれる若者もいる。
O だから彼らの親たちは君を告発したのだ。君は若者を堕落させていると。
S 知っているさ。
O なぜ君はみながその人なりに善を目指しているのに、それにちょっかいをかけようとするのだ。
S 私がいろいろな人に問いかけて分かったことだが、たいていの人は善など目指していないよ。彼らが考えているのは効率だよ。
O そんなことはない。君のようにうまく理屈が言えないだけの人もけっこういると思う。
S 大抵の人は、自分が何をやっているのか知らない。そしてかなり老いぼれてきてからなんと、一番大事なものは金銭か知名という。
O ぼくは健康第一だと思うな。
S それは当然だよ。しかし、それは健康でないときの言うセリフさ。君こそ抽象的な男だ。私が言っているのは、健康であることを前提として言ってるんだ。で、金が一番大事だと言う人はまあいわゆる凡人といい、知名が一番大事という人を空想家というのさ。空想家の中でもいちばん厄介なのは知識人と言われるやからだね。政治家が知名を大事にするのは当然だが、いわゆる知識人は自分のことを知識人として名が通っていることを喜ぶが、じつは彼らは無知なのだ、そして彼らがいかに無知かをそれとなく教えてやっている私の親切が分からない。
O そういう人たちをほほえましいとして放っておけないの。
S 放っておいてはいけない、と私のダイモンが命じる。そして私はその命令をきかないわけにはいかない。だから私は嫌われる。
O 知識人がそんなに無知なの。ぼくには分からないな。
S 彼らの知識というものはたいてい専門知識にすぎない。あるいはもっと他のいろいろな知識を持った人もいるけどもね。しかし、それは世に流布したただのニュースだ。彼らは分かり切った事を互いに言い合って悦に入っている。彼らは知恵者ではない。何のためにそのような知識を持つ必要があるのか尋ねられたらだれも答えられないんだ。
O でも、人間っていろいろなことを知ること自体が楽しいのではないのかな。楽しんではいけないの。
S 楽しむのは・・・まあほほえましいね。だが、自分に対して嘘をつくことはいけない。彼らは自分を知恵者だと思い込んでいる。その誤りを正してやらなければならない。
O 知恵者でなければいけないの。
S 真の知恵者は善を目指すことで。・・・それは自分に嘘をつかないことが必要なんだ。
O 善、善って、君もしつこいね。
S いつもそうして私は嫌われる。しかし、私はどうしてもよく生きること、つまりいつも善に照らして生きるということだけど、これだけを何よりも大切にして生きるということを言っているだけなんだ。そして大事なことは、それを私一人で考えていてはいけない、どうしても他人と問答し、彼らにもそのように考えさせよ、とダイモンが要求するのだ。
O そんな生き方をしていると、君はどこにも居場所がなくなってしまうよ。
S だから妻にも嫌がられるし、まあそうなってもしようがない。ぼくは死ぬことを恐れてはいない。なぜなら死とは何かまったく知らないからだ。それをあたかも知っているかように語る人がいるが、嘘をついているとしか思えない。
O ちょとおかしいよ。死とは何か知らないから死を恐れないというのは。むしろ人は死について痛いとか、地獄とか想像するから恐がるのさ。知らないから想像してしまうのだよ。
S 想像にもとづいて結論づけるのがいけない。知らないことは知らないと言えばいいのだよ。ぼくはまったくいろいろなことを知らないよ。肝心なことは知らないことだらけだ。あの例の知識人は、なんでも知っているようなふりをしているけれど。考えないからそう思ってしまうのだ。
O なんとでも思わせておけばいいのじゃないの。きみも原理主義的だね。
S ぼくは人間の無知を暴いてやりたくてたまらないのだ。
O おせっかい病だね。君のような人間はどこか人里離れたところで一人で生活すればいいのだ。
S そういうわけにはいかない。ぼくはどうしても人と問答しないではいられないのだ。
O やっかいな男だね。


  S:Socrates   O:Ordinary man
 

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