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『桜の園』

背景は19世紀末のロシア。大地主が代々住んでいた美しい土地(桜の園)を、時代の流れとともに手離さなければならなくなる話だが、舞台上では登場人物たちは自分が育った時代を夢の糧として生きており、彼らは皆その性格に応じててんでバラバラに勝手なことをしゃべっている。その不統一が、終わって見れば、じつは全体としてそのかけがえのない一時代を浮き出させている。

 ある地主は自分の土地に鉄道が走ることによって大儲けをする夢を見、振興の土地ブローカーはリゾート開発でひと儲けしようとする。桜の園を手離さなくてはならない女地主は裕福な育ちでおっとりとした人で、他人への信頼と愛情に満ちているばかりで、経済観念をまるで欠いている。

 最も歳をとった耳の遠い老人は言う、昔はみな面白く生きていた、旦那と百姓は心から結びついていた、農奴解放令がでて自由民になった連中ときたら勝手放題で、訳が分からん…と言う。みなこの老人のことをうっとおしく思っているが、多少は気にかけてはいる。

万年大学生は、人類の進歩を信じており、しかしロシアの現状は底辺の労働者らの極貧および道徳的腐敗、そしてインテリを口ばかりで何もしない偽善者、ロシアのすべてはアジア的野蛮と停滞、と非難する。しかしこの男もまた、頭をイデオロギーでいっぱいにして、一時代前までの地主はみな農奴性の賛美者で農奴をしぼれるだけしぼっていた、と憤慨する。

しかし、だれもそんな話は聞いてやしない。ただ彼を愛する最も若い登場人物は、かれの話にうっとりする。そしてこの愛する乙女は、彼とともに新時代を夢見る。彼は彼で、自分たちは恋愛を超越していると言っている。

桜の園を手離さなくてはならなくなった女地主に対して、この万年大学生は、すべては時代の流れで、きっぱり現実に目覚めなければならないと諭す。それに対して彼女は、あなたは人の心も本当の人生も見えていないから、はっきり物事を割り切ったように語れるのだ、そんな人には、彼女の昔の男に対してなお愛する気持ちや、この桜の園に結びついた子供時代の懐かしい気持ちが分からない、人の心を解さない変人だと非難する。

彼女の兄も一言居士だが、お説教を述べようとするたびに周囲から押しとどめられる。養女も執事も小間使、従僕たちも、みな対話してるのか独白しているのか曖昧模糊として、ときに脈絡なく話が飛ぶ。ひとはみんな自分の観念の中に閉じこもっている。いったい客観的な世界の流れなどというものはあるのか。

みなそれぞれ欠点あるいはこだわりをもっているが、悪人は一人としていない。それぞれの時代と性格を背負って夢を持ち、みな時代に流されて生きる。そして最後にこの桜の園の館からみんな居なくなる、ただ一人あの老人を残して。

病弱の老人は呟く、「わしのことを忘れていったな。・・・なあに、いいさ、・・・まあ、こうして坐っていよう・・・ほんとにお若えお人というものは! 一生が過ぎてしまった、まるで生きた覚えがないくらいだ。どれ一つ横になるか・・・。」

      

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