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泉鏡花『高野聖』を読む

これを読んだのは何年ぶりかな。おそらく二十年振りくらいだろうか。詳しいことはまったくと言ってよいほど忘れていたが、あの一種独特の雰囲気だけは残っていて、高野聖という名を思い浮かべる毎に、自分のうちにあの暗い雰囲気は、月が照る夜に渓流のそばに居る女に収斂していくのであって、いつかまた、もう一度これを味わいたいと思っていた。それで、読み返した。読み進むうちに、なるほどこんなことがあったな、と遠いおぼろげな過去を思い出しながら読んだ。
 この作品は、不気味なもの、恐ろしいものの正体をもっと知りたいと、読者に感じさせるよう、初めから工夫されている。読者は坊さんと初めに知り合いになる。その坊さんの体験した不思議な話である。
坊さんが、危険な山道をーそれがどうして危険であるかを、読者は色々想像するようになっている、―薬売りを呼び戻そうと義侠心を起して、一人で上っていく。そこには坊さんの苦手な蛇が横たわっていたり、昼なお暗き森を通過するときに蛭の大群に襲われたりして、ほうほうの態で峠を越えると、人里はなれた一軒の家がある。
時は夕暮れ、ここで一休みさせてもらおうと頼む。ここには、まだ若くて歩行が出来ない出臍の白痴とやや峠を過ぎたと思しき歳の妖艶な美しい気性のはっきりした女とが住んでいる。もうそれだけで、十分不気味な状況のなかに読者は入ってしまう。
そこには・・・・・〈あらすじなど書かないほうがいいであろう。読んだ人には退屈、読んでない人には興ざめ〉
 鏡花の文体は、抑制が効いていて、おせっかいでないため、かえって読む者の想像力や情動を高め、読後に強い夢のような印象をあたえる。そうして人はこのような恐怖を欲していることを、それとなく知る。

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