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ルーツ

わが家には系図が残っていて、それを見るとわが姓は鎌倉時代初期に作られたと書いてある。その経緯についても記載があって、『吾妻鏡』にも似たような状況が触れられていて、家名を重んじるご先祖が、こういう歴史書に関連づけて書いたのかもしれない。

 この系図によると、わが御先祖は室町時代には四国の讃岐に住んでいたことが判る。その時の何某が親に勘当されて(たぶん永享の乱(1487)で反幕府勢力についたためか)、京にのがれ、そこで知り合った朝倉氏に拾われ員弁(いなべ:現四日市市)に下った。7・8年くらい前、讃岐に行って祖先の菩提寺であったと思われる志度寺を訪ね、その頃の過去帳を見せてくれと頼んだが、そんな古い過去帳はもうぼろぼろで見せることはできないと断られた。

 なんでわが家にこの系図が残っているかというと、小生の5代前の杢米さんが江戸後期に員弁から家出をして鈴鹿の関に分家を為したのだけれど、その後、なぜか員弁の本家の重彦さんという人が明治33年に原本の巻物の系図を冊子に書き写してくれてあって、それがたまたまわが家に残っていたわけである。

 5・6年前に、この杢米さんが出てきた本家を知りたくて、苦労して見つけたことがある。昔庄屋さんをしていたという広い土地に一人で住んでおられた女性は、小生と同年代だ。そして重彦さんは彼女のお祖父さんとか言っていたが、しかし恐らく曾祖父ではないかと思う。小生の曾祖父母には実子がなかったので、彼女と同じ家系とは言え、とっくに血縁関係はない。

 ところで、小生と血のつながりのある父方の祖父母についての話は、父からほとんど聞かされていなかったし、そもそも父がどこで生まれたのかも知らなかった。つい最近になって、とは言っても10年くらい前に親戚筋から父は大阪生まれだということを耳にしたことがあったが、しかし父の死後、父方の親戚とは小生はあまり付き合いがなかったし、関心もなかった。

 ところが、2年くらい前、父の胤ちがいの弟が亡くなったとき、その奥さんから、相続の関係で戸籍謄本を見せてもらったのだが、そのとき父の祖父母が兵庫県出身であることを知って、大いに驚いたと同時に、彼らの生まれ育った所を知りたいと思った。例の如く、いつか行こうとは思っていたが・・・。

 祖母の出は、このたび改修を終えたばかりの姫路城郭のすぐ西側の材木町というところだ。旧姓を辿って一軒一軒を調べ、玄関の花に水遣りをしていたおじさんに尋ねても判らなかったが、まああのお祖母さんは結婚するまでこの辺りで育ったのだなと思ったことで良しとした。

  材木町1  材木町2
 


 ところが、祖父の出場所はよく判らなかった。戸籍に記されている住所は今はない。事前にインターネットで調べて見当はつけていたが、かなりいい加減で自信がない。それにあちこち歩き回ると疲れる。だからまず、叔母に見せてもらった戸籍謄本を出した竜野市(現たつの市)の役所を訪ねた。それが正解で、係員が調べてくれて、その場所は現在のこの辺りだと、ゼンリン地図を広げて、行き方を教えてくれた。

 その辺に行った。表札を見て回る。しかし、人影はない。全部の家を回ることは難しそうだ。かりにピンポンしても殆は出てきてくれまい、まあこの辺りということで良しとするか、・・・と思って諦めようとしたとき、近くの大きな家にお婆さんが入ってゆくのが見えた。これはチャンスと駆け寄り、かくかくしかじがの理由で石原家という古い家を探している、と訊いた。お婆さんは、この辺りには石原さんという家はない。しかし、たしかもっと南の方に石原という人がいたよ…、と言ってくれた。しかし役所で教えてくれた場所とはちょっと違う。どうしようと一瞬迷ったが、せっかくここまで来たのだから、行ってみることにした。

 それは、お婆さんの家から、1キロメートルくらいの所だろうか、広々した田園地帯で、田んぼの間に所々家がある。みな大きな家である。さっそく覗いた家の表札は、なんと石原であった。ドキドキする呼吸を整え、怪しまれぬために要領の好い説明を頭の中で繰り返してから、ピンポンを押した。

 ところが誰も出てこない。シーンとしている。門を押してみるが開かない。たぶん出払っているのだろう。しかたがないので、近くの家を当ってみる。と、次の家も石原だ・・・。そうか、この辺は石原一族の土地なのだ。きっと祖父の生まれた土地に違いない。そう思っただけでじんわりと喜びが胸に広がった。


  石原家2  


次の家にはピンポンがない。表門の引き戸を引いてみる。おっ、開いた。無断でそっと入って南向きの家の玄関に近づく。左手にある庭の向こうの部屋の廊下に座っている人影を見たので、庭石を渡って近づいた。向こうも怪しい人影を感じたのか、廊下の窓をそっと少しあけ、こちらを覗く。なんだこの不審者めという顔つきだ。小生は不意を突かれた感じで、ちょっとぎこちない挨拶と説明をした。しかし、向こうのは黙ったままでこちらを見つめる。なかなか不審を解くことができない様子だったので、戸籍謄本の写しを見せた。

すると、なるほどこの筆頭の人はわが家の曾祖父の名前だ、ちょっと待ってくれと言って、玄関から出てきてくれた。そしてなぜか今まで小生が歩いてきた門前の道に小生を誘い、広々とした田んぼのあちこちを指さしながら、辺りの地理の説明をし始めた。なんで、急にこんなことを饒舌に語り始めるのだろうと、今度はこちらが不審顔。

彼が言いたかったことは、その昔は江戸時代、石原の何某がいて、この辺り一帯の土地をもっていた。元禄時代、赤穂事件があったとき、その報を赤穂に伝える役目をしたらしい。しかし、明治の初め、この長男が、―小生が手にしている戸籍謄本の二人目の人物を指さし、―やくざ者になったたため、家から追放されたので、その弟であるこの音吉さん(曾祖父)が家督を継いだ、彼はとても真面目な働きものだったので、さらに広い何町という土地の地主になった…マーカーサーの来日後、わが土地は4反に減った、云々。

「とにかく、音吉さんがあなたの曾祖父ならば、小生の祖父はその弟だから、われわれは血のつながりがありますね」と小生は確然とした口調で言った。(じっさいは、一代経ると2分の1とすると、128分の1と薄いけどね。)それから、彼はまた小生を自宅の庭に誘って、この庭は自分が自分の趣味で造った庭でねと木々の説明をし始めた。庭を掘れば昔の石がいくらでも出てくるから、それをいくらでも利用できるのだ。あなたのお祖父さんが居たころのもので残っているものは、この銀木犀くらいかな、と庭の隅に在るやや大きい木を指さした。小生は、おおこれが祖父が見たものか触れたものかと思うと、とても懐かしい思いがして、何度もその幹をなでた。そしてその前で二人並んで記念写真を奥さんに撮ってもらった。

  石原家1


奥さんは、小生の顔を見て、そう言えば親戚の誰誰に似ている所があると言った。しかし、そう思ってみれば誰でもどこか似ている所があるのじゃないかな。そして、小生と同じ病を克服した人のことが書いてあるから、これを読めと言って数冊の雑誌を貸してくれようとした。小生は地元でもこの雑誌は読めるし、その御心だけで有り難いと言葉を返した。

石原さんは、すぐ近くにわが家の墓があるからといって、そこに小生を連れていった。広々とした田んぼの一角。また、彼は土地の話をながながとし始めた。小生は一通り墓石に頭を下げ、辺りの風景を記憶に刻みこんだ。もうこれでいいという気持ちだった。

それしても、顔を知ることもない祖父の生まれ育った家があった所に来ることができたのは、あの市役所員とたまたま遭ったお婆さんと小生の無礼な勇気のおかげであったのだ。帰りの駅まで歩く途中でうどんやに入ったが、小生の好みの味ではなかったのが残念であった。まあ、何もかもそううまくいくまい。


     


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コメント

No title

未見太郎さん。こんにちは。
小生は以前から縁者の昔のことを知りたくなる傾向がありましたが、歳とともにますます、とくに血縁の人のことを調べたくなっています。理性ではそんなこと知ったところでどーするの、と思うのですが・・・。

先日、区役所でこの地域の昔の風景の写真とか、昔使っていた道具だとか展示されていまして、たまたま見たのですが、懐かしいって感じがするんですよ、知らない所でも、自分が生まれる以前のものでも・・。

小生のような人間がいるから、やはり古い記憶はしっかり残しておきたいですね。個人の家では持ち続けられませんし、いずれ捨てられるでしょうから、古い写真や使わなくなった道具などなんでも、地域の役所とか保存館、博物館などに譲るような制度が確立されることを望みます。1000年経ったら正倉院ですよ。

また、我が家の歴史に新しい発見がありましたので、読む人には退屈かもしれませんが、書きます。

No title

うたのすけさん、びっくりのアーカイブズのお話ですね。

テレビ番組でも、この頃よくファミリーヒストリーなどが、編成されてますね。
由緒もなく、名家でもないであろう我が親族のことも、調べてみたくなりました。昔を語れる唯一人の高齢の叔母に今度会いに行くつもりです。ちなみに私の曽祖父の名前も同じ音吉さんでした。

それにしても、病気をはねのけるお元気さで何よりです。

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