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『神曲』 1

ダンテ作『神曲』というと、なにやら厳めしい、暗いキリスト教文学と想像するかもしれない。しかし、読んでみると、じつに面白い、奔放な想像力の傑作詩編だと感じた。むしろ、小生にはJ.ヴェルヌの『地底探険』やA.クラークの『地球幼年期の終わり』などのSFファンタジーを連想する。

そもそも神曲とは森鴎外の名訳であって、ダンテのイタリア原語では『Commedia』つまり『喜劇』であるという。たしかに、これが書かれた当時、1300年ころのフィレンツェで暗躍した人々が実名で登場してくる。彼らは、聖書やギリシャ神話などの登場人物と共に、地獄や煉獄や天国で、悔悟の涙を流したり、王党派と教皇派との対立、闘争について語ったり、いずれ現世に戻るべきダンテに頼みごとをしたりする。

 地獄、煉獄、天国にはそれぞれまたいろいろなレベルがあり、極めつけは、地獄の谷の最下層の状況だ。

「いま詩に歌うのも恐ろしいが、
 私はついに来たのだ、
 ここでは亡霊たちはみな氷漬けにされ
 ガラスの下の藁みたいに透けて見える。
 ある者は横たわり、ある者は起立し、
 ある者は頭で、ある者は爪先で立っている。
 そしてある者は弓なりに顔と足とを
 向けあっている。」

声も出ないほどの恐怖に怯えつつ先に進むと、彼はついに悪魔大王を見る。この巨大な帝王が氷地獄を創っている。この大王は色の異なる三つの顔と三つの巨大な対の羽をもっていて、羽を動かすごとに寒風が巻き起こり、氷は凍てつく。恐ろしい爪と歯は罪人たちを傷つけ、血だらけにしている。中でも最悪事を働いた三人が見える。キリストを裏切ったユダとシーザーを殺したブルータスとカシウスだ。(なんでや)

この絶望的に苦しい地獄から煉獄の地平に脱出するのが、またとても手が込んでいて、イメージしにくいのだが、それがまた猛烈に大胆なのだ。彼ら(ダンテとヴィルギリウス)は、悪魔の翼が広がった瞬間に、その毛むくじゃらの脇腹にしがみついた。そして毛を伝って下に降り、地殻の間へ這入り込んだ。そこは悪魔の腰間接のあたりで、そこは地球の中心であって、そこから先は重力が反転する。だから、ここからしばらくはダンテは上下さかさまの感覚にとらえられる。

天頂の真下にエルサレムがあり(北半球)、その天球の反対側に(南半球)着いたというのだ。そこをどんどん昇っていくと、向こうの夕方は、こちらの朝、いつしか小川が流れ、上の方に円い孔から外に出ると、星が輝いていた。・・・となる。

そうして、煉獄に踏み入れるのだが、そこでの薄明の描写が美しい。

「東方の碧玉のうるわしい光が
 はるか水平線に至るまで澄みきった大気の
 晴朗な面に集い、
 私の目をまた歓ばせてくれた。
 目を痛め胸をいためた
 死の空気の外へ私はついに出たのだ。」

そこからアルプス越えを思わせる急峻な煉獄の山を息急きって登りつめたダンテは、ヴィルギリウスの手を離れ、天国に入る。そこでは、『未知との遭遇』のように、光の饗宴が催されている。だからここではアポロン賛歌から始まる。ここで彼は最愛のベアトリーチェに導かれ、至高点に至る9個の天球をめぐり、キリスト教の奥義を教えられる。この天国篇が一番理屈っぽい。


     

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コメント

ファンタジー

未見太郎さん、こんばんは。
そうですね、女性的なるものに救われる点など、「ファウスト」に似ていると言えば似ていますね。
ダンテは、王党派で、長い間追放されていたみたい。その間にあの世を見てきたのでしょうね。
あらゆるものは、カトリックの教えさえも、すべてはファンタジーの種にあらざることなし。

ファンタジー説ってすごい!

うたのすけさん、読書楽しんでますねぇ。

私もこの記事は幼い頃を楽しく思い出させてくれました。J.ヴェルヌの地底探検、や80日間世界一周、また、おとぎ話として聞いた、地獄、煉獄、天国の怖い絵柄などを。

ダンテはこの神曲 (La Divina Commedia)を、放浪の中で書いたそうですが、まるで、一度死んで異界を見てきたようなストーリーですね。臨死体験をした人がよく見るという光の饗宴とか、賛歌とか・・・。
それにしても、導き役はいつも女性、心の解放を渇望していたのかしら。
ふと、ゲーテ「ファウスト」のグレートヒェン、漱石「それから」の代助と美千代をおもい浮かべました。

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澄み濁るをば神ぞ知るらん

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