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『神曲』 2

 しかし見方によると、ここが一番面白いとも言える。ここにきて、いったいヨーロッパ中世とは何だったのか、と問わざるをえない。中世。年代的には諸説あるものの、概ね5世紀西ローマが滅んでから、15世紀東ローマが滅ぶまで。だが『神曲』を読んだ後では、小生はヨーロッパ中世を一つの理念でもって表したくなる。すなわち、キリスト教をギリシャ哲学で説明し正当化しよすとすること。プラトンの宇宙論をベースに、キリストの磔劇をアリストテレスの言葉で解明すること。全情熱が、ひとえにここに掛っているように見える。

 ローマ・カソリックに完全に帰依しているダンテに、ヴィルギリウスは言う、

「三位一体の神が司る無限の道を
 人間の理性で行き尽くせると
 期待するのは狂気の沙汰だ。
 人間には分限がある、『何か』
 という以上は問わぬことだ。
 もしお前らにすべてがわかるというのなら
 マリアがお生みになる必要はなかった。」

 三位一体説。これについてはかつて書物で調べたり、教会の神父さんに訊きにいったりしたものだが、小生の頭ではついに理解することができなかった。おそらく、さらに百年生きて考えても、小生には解らないと思う。たぶん、解らないように作られているのだ。誰も解ってはならぬ。

 しかし、天国におけるベアトリーチェはダンテに全てを説明しようとする。
アダムの罪はその子孫すべてを罪に落した。長いあいだ人類は下界で病んでいた。しかし、その時が来るに及び、神は、創造主から離れていた人性を永遠の愛の働きによって、神に、神の位格において、結びつけられた。人性は、創造主に結び付けられると、清純、善良になった。しかし人間が道を踏み外したので、天国から追放されていた。

十字架において科せられた罰は、キリストが帯びていた人性に照らしてみれば、正当な罰であり、この人性が結びついていた神の位格が蒙った非礼を考えてみると、不当な罰といえる。同じ一つの死を神もユダヤ人も喜んだが、その死によって、地が震え、天が開かれた。正義の復讐が、そののち正義の法廷によって、報復を加えられた。

 なぜ神はわざわざこの様な面倒な手続きをとったのかって。
 人間が楽園からの追放を回復するには、神が慈悲の心から人間を許したまうか、または人間が自らの手で決着をつけるかしかない。しかし、人間は自身で決着をつける力はなかった。そこで、神はその無限の愛によって、人間を許したもうたのみならず、人間が再び身を起こせるよう神自身をお与えになった。この演技こそ正義を成就するものである。これがキリスト劇の秘密であった。・・・そして、
 
 この宇宙のあらゆる物質は、神によって創られた力、すなわち形相力による。あらゆる動植物の魂は星星の光の運動が引き出したものだけれど、人間の魂には、神が息を吹き込んで、神(至上善)を慕うように創ったのだ。・・・よく解らないけど、そうなのですか。

 まあともかく、人類史において、人間に理性が突然目覚めた、そしてもっとも感受性が鋭くなった青春時代に、キリスト磔劇を目の当たりにして胸に深く刻まれてしまった。その後、ユダヤ人のある一派が、自分たちの神を巧みに利用して歴史を創った。その中心問題は決して解けない方程式だったのだ。世界を映し出していたオズの魔法使いは結局ばれてしまったが、三位一体の謎々はまだ誰も解いた者はいない。1900年の後、「真のキリスト教徒はキリストただ一人であった」と謎めいた言葉を残して発狂した哲学者もいた。

 どんなに善良な人であっても、もしこのキリスト劇を知らなかったなら、地獄に落とされていることになる。だから、プラトンやアリストテレスなどギリシャの哲人たちは、みな地獄にいる。とはいっても、彼らは何も悪事を犯してはいない。だから地獄にいるとはいっても、辺獄(リンボ)にいる。ダンテがあれほど慕ったホメロスでさえもリンボにいる。

 しかし、ダンテはやはり詩人であったと、小生は感じる。彼がどんなに中世的神学秩序を守ろうとしても、むしろそうすればするほど、彼の詩的創造力はその秩序をガタピシいわせている。そういう意味で、彼はすでに開放された新しい人間である。

 それにしても、『神曲』ほど、心の奥深くへ、地獄の底から天上の世界の果て、星星の世界まで、全宇宙の素材を駆使して物語った壮大なファンタジーを小生は、いまだ他に知らない。


     


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