スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

漫談 on Paris

やまと君 「そういえば、今年は年明け早々、パリで二人のイスラム教の信者二人が、なんとか言う雑誌社を襲ったけど、あの出版社なんというのだったかな」

パリ女 「シャルリエブドという週刊新聞社でしょ」

やまと君 「そうそう。そういう名だった。二人のイスラム教徒の若者が17人の命を奪ったのはショックだったけど・・・」

パリ女 「私もすごいショックを受けたわ。まさかパリでこんなことが起こるなんて」

やまと君 「でも、その新聞はいつもえげつない漫画を掲載していて、ムハンマドの風刺もよくやっていたというじゃないの。そりゃイスラムの真面目な若者は怒るよ」

移民少女 「そうよ。ひどいじゃん、シャルリエブドは。以前からイスラム教徒から抗議の声が上がっていたわ。あんなことを続けていたら、いつかはこのような事件が起こることは分かっていたはずじゃん。」

パリ女 「オー、マドモアゼル。でも殺人で仕返しをするのは最悪だわ」

やまと君 「そりゃ殺人はいかんな」

移民少女 「でも、そこまでイスラムの若者を追い込んだのがいけないじゃん。私らにとってモハメッドの絵を描くことすら考えられないし、まして面白おかしく風刺するなんて、無神経にも程があるじゃん」

やまと君 「そうだなあ。イスラム教徒がそんなに嫌がっているのに、教祖を辱めるような漫画を描くのも悪いよなぁ」

パリ女 「ムッシュー。フランスは自由の国よ。表現の自由を何より重んじるのよ。そりゃシャルリエブドはえげつないかもしれないけれど、間違っていると思ったら、どうどうと言論で反論すればいいのよ。それに、私たちイスラム教徒でない人間がムハンマドについて何と言おうとも、イスラム教徒が反発するのはおかしいわ。」

移民少女 「それにしても、私たちはパリに住んでいるのよ。一緒に住んでいるのに、私たちの神経を逆なでするようなことを、そう執拗に表現することはないじゃないの」

やまと君 「そうだなぁ。日本人なら、他人がそんなに嫌がっているのなら、あまり言うのはやめておこうと考えるだろなあぁ。」

パリ女 「だから日本は村社会って言われるのよ、ホッホッホ」

やまと君 「そうなんかなぁ。一番驚いたのは、あの事件の直後、フランス全土で300万人以上の人らが、〈私はシャルリ〉なんてプラカードを掲げて、表現の自由を訴えたことだな。そのときフランス大統領・・・なんという名前だったかな、それとドイツの首相やその他大勢の国々のえらいやさんたちも、一緒になってデモ行進したけれど、不思議な光景だな、なんか冗談かと思ったよ。」

パリ女 「オー、ムッシュー。これがフランスの伝統なのよ。わが国はずっと昔から、世俗第一主義、政教分離の原則があるの。ライシテっていうのだけどね。学校や公の場では、あからさまな宗教表現はいけないことになっているのよ。」

やまと君 「あの襲撃事件以来、フランス政府はその政教分離を学校でいっそう徹底させるべく、ラ・マルセイエズを歌わせることを推し進めているというじゃないか。これがどうもぴんとこなかたけど・・・。日本もこのごろ道徳教育だの国歌斉唱なんかを奨める傾向があるけれど、その意味はぜんぜん違うね、むしろ反対みたいだな。」

パリ女 「ウイ。ウイ。全然違うのよ。フランス共和国においては、道徳とは、宗教のもつ恐ろしい力から理性を守ることよ。それがラ・マルセイエズなのよ。ホッホッホ 国家の起源を神話や宗教に求めると独善に陥りがちだよね。そんなのからすっぱり手を切ったのだね、フランスは。国家はたんなる世俗的な統治機構とするのがスマートなのよ。ホッホッホ。」

移民少女 「フランスがそんなに道徳的な国ならば、どうして私たち移民二世・三世を差別するの。私たちは学校も職場も住まいもだんだん不利に・・・孤立化させられてきているじゃん。あの襲撃犯の若者たちも被差別感にさいなまされていたのよ。」

 パリ女 「ビアンシュール。べつに私たちは、あなたがたを差別するつもりはないわ。たしかに一部のフランス人は差別しているみたいだけど・・・。」

移民少女 「それを矯正することが先決じゃなくて」

パリ女 「政府は、今いかなる種類の差別もしないように生徒たちに徹底させようとしていますよ。これがラ・マルセイエズよ。ホッホッ。でもね、それには、まずいかなる人も、この国に住んでいる以上、この国の方針に従わなくてはいけないわ。ずっと前、イスラムの女学生が教室でスカーフをとらないので、退学させられたことがあったわね。あの処分は当然よ。」

やまと君 「あれはちょっと可哀そうじゃないのかなぁ。日本人だったら、べつに他人に迷惑をかけないならば、まあスカーフくらいしていてもいいじゃないのって思うけれどね。」

パリ女 「アロー。だから、日本人は平和ボケって言われるのよ。ホッホッホ。あんたがたは、2000年のあいだ海に囲まれて他国とそう酷い戦争が続いたことがないから、そういう発想になるのよ。私たちは、そりゃもう酷いものだった。宗教の名のもとに土地を巡って戦わない日は一日たりともなかった。戦争の原因の一つである宗教を政治から切り離すのはとても困難だったのよ。それをやっと百年前に法的に禁止するようになったのよ。フランスにとってこれほど重要なことはないわ。だから個人の信仰は尊重するけれど、公の場所でのあからさまな十字架のネックレースは禁止なのよ」

やまと君 「解ったけれど、だかといって、あんな不快な思いをさせる漫画新聞をよしとするのは、理解できんな。むしろ、あれは戦いを起こす要因の一つにはならんかな」

移民少女 「そうじゃん。あんな新聞記事が戦いを誘発するのよ。」

パリ女 「マドモアゼル。暴力はいけない。とくに現代のような、ボタンひとつでパリを消滅できるような時代ではとくにね。表現の自由は絶対だわ。もし不快な思いをしたら、言論で勝負すべきだわ。それが理性というものよ。そして論争でにっちもさっちもいかなくなったら、最後は気のきいたウイットで終わるのよ。それで両者は真の友人どうしになれるの。それがフランスのエスプリって言うのよ。ホッホッホ」

やまと君 「では訊きますが、他人に不快な思いをさせてもいいが、暴力はいけない、殺人はいけない、というのはどこから出てきたの。誰が決めたの。その根拠は何なんだい。」

パリ女 「自分の親や先生や尊敬する人の悪口を言われて不快な思いするのは当然であるとしても、それに対してさらっと流せる、あるいはそれに対して反論できるのがフランス精神よ。」

やまと君 「それは素晴らしい精神だとしても、わざわざその人の前で悪口を言わなくてもいいじゃないの。」

パリ女 「それを聞いて不快な思いをして、黙って胸の内にしまいこんで、いじいじしている人を、冴えない人とか弱い人っていうのよ。フランスではね。そしてそれがたまると、いつか爆発するわ」

やまと君 「でも世の中には弱い人もいっぱい居るじゃない。そういう人たちの心をつねに配慮して生きるのが、あなたに反発して言わせてもらえば、日本精神と言いたくなるね。とにかくわれわれは人情を大切にする。」

パリ女 「ホッホッ。例の日本人特有の、黙っていても意は通じるっていうのね。やっぱり村社会ね。一見素晴らしいわ。あなたたちは、いつも他人の目を気にして生活している。他人が自分についてどう思うかを第一に考えている。慎み深く、控え目で、美しいわ。だから、日本人はまとまりがいいのね。でも、われわれパリジェーンヌから見ると、だから日本人は個人として独立していないのよ。」

やまと君 「個人の独立と言ってみても、言葉だけ聞くと立派だけど、人は一人では生きておれません。人はいつも他人との心の交流の中で生きていますよ。僕から見ると、フランス人はわがままなんだな。わがままと言うのがイヤなので、格好をつけて個人の独立なんて言っているような気がするな。離婚が多いのはその一典型じゃないか」

パリ女 「あっはっはっは。おっホッホッホ。あなたたちだって、もっと自分で自由にものを考え行動できるようになったら、離婚も増えるでしょうに。」

やまと君 「でもね。あなたがたの言う個人の概念は、やっぱりキリスト教から来たものじゃないの、つまり全ての人は神の前では平等というのとパラレルだね。われわれ日本人は、私がいて、あなたがいて、誰誰さんがいて、皆それぞれその性格に応じて生きている。それで充分なんだ。べつに個人がどうのこうのとあらためて言う必要はない。そう考えると、個人を強調するあなたたちはやはりキリスト教文明の落し子なんだ。」

パリ女 「・・・まあ、起源のことを考えると、何とでも解釈できそうだし、今の生き方を問題にしている時に起源をもちだすのは野暮なことよ。ホッホッホ、まあ、それはそれとして、もう一つの問題、どうして殺人はいけないかって。それは、生物学的要請から来ているのよ。それを説明すると長くなるから、今日はやめとくね。またゆっくり話しましょうね。アビアントー。」





にほんブログ村 哲学・思想ブログ 思想へ
にほんブログ村


関連記事
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー) URL

プロフィール

うたのすけ

Author:うたのすけ
世の中の人は何とも岩清水
澄み濁るをば神ぞ知るらん

最新記事
カテゴリ
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
FC2カウンター
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。