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良経の二首

  夢の世に月日はかなく明け暮れて
       または得がたき身をいかにせむ
 

西行のようでいて、しかし西行のようにいわば時代と対決した心の深さというものはない。ここには身分も才能も有り余るほど恵まれた若い詩人のアンニュイからの危機が迫る。ややもすれば理屈っぽくなりがちな思想歌だが、青年の素直な心がストレートに歌われていると感じる。今この歌を詠ずると、「または」という言葉の意味合いと響きが効いていて、歌の姿がすっきりしと感じられる。

   見ぬ世まで思ひ残さぬながめより
       昔にかすむ春の曙


 これほど意味がとりにくい、しかし一部の粋人の心を蠱惑してやまぬ歌を他に知らない。かく言うぼくもこの歌は長らく気にはなっていて、しばしば頭に浮かぶ。

 清少納言の文体の春の曙は、現代のコマーシャリズムにぴったりな、そのイメージは明瞭・鮮烈で、瞬間に万人にそのエッセンスを理解させる。この良経の歌はまったくその反対で、その曙は茫洋としていて、空間的奥行きも不明瞭で、時間的にも現在が未来でも過去でもありうるようなものである。

 来世にも心残りがないように今の素晴らしい春の曙を堪能しよう。しかし昔見た春の曙はもっと美しかったはずだが、それはもう漠とした思い出としか言いようがない。しかし今見る春は純粋な現在のものとは言い難く、どうしても過去の記憶に沈んだ〈あの春〉の修飾を受けたもの、つまり現在の知覚は思い出の力によっている。あの過去は、あの思い出は何だったのだろう。失われた時は〈存在〉していて、現在に呼び掛けている。しかしこちらからそれを求めることは不可能なのだ。
ぼくの勝手な解釈。

藤原良経(1169~1206) 『新古今和歌集』仮名序を執筆、巻頭歌の作者。従一位摂政太政大臣。亨年38.


     

     
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テーマ : 詩・和歌(短歌・俳句・川柳)など - ジャンル : 学問・文化・芸術

コメント


旅立ちは 桜待つ陽の 匂う朝


電磁波で 彷徨う男 うたのすけ

今一度 桜咲く陽に 便り聞く


お久〜

いい歌ですねっ、
良経ですか、若くして亡くなられたんですねっ
西行の時代を超えた普遍性の前に珠玉の呟きの
ように響きます。

葛城紀行とても興味深く読ませていただきました。

次はどちらへ旅されるのか興味津々です。



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