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『夜明け前』について

 藤村の『夜明け前』を少し前に読んだが、読後感を書こうと思っていたが、なんとも苦しい気持ちが続いていた。放っておくのも気持ちが悪いから、ちょっとだけ書いておこう。ただ、藤村の主人公(父がモデルらしい)にたいする愛情の強さが小生にとって救いであった・・・それにしてもこれは大著だ。

 主人公半蔵の生涯。何というか身につまされる。これは小生か。

 主人公は東山道の馬込宿の本陣庄屋問屋を経営している伝統ある家に生まれた。時は幕末。親の世代の影響を受け江戸幕藩体制の一翼を担っているという自負もあるが、一方長年に及ぶ封建体制の悪しき面も否応なく目に入る。仏教僧の堕落、武士や公卿の農・工・商への謂れのない圧迫。そこへ黒船だ。体制が揺れる。折から国学を志した半蔵らの世代が、新しい復古、尊王の時代を夢見て動き出す。

 しかし、明治という時代になって、半蔵ら国学の徒らが思い描いていた〈宣長の儒仏以前のまことの道〉から国が逸れていく。社会のシステムは早々変わって、馬込宿は見る影もない。半蔵の夢もいつしか新しい世代の者からも離れてゆき、社会との連帯を失って、半蔵は己の夢の中に孤立する。平田派の古き神の道に従い、神仏分離の必要に捉われた彼は、ついに夢を貫こうと家の菩提寺に火を点けようとするところを村の者に見つかり捕まる。以前は人望があったので、警察沙汰にはされなかったものの、座敷牢に閉じ込められる。家族や村の者はいたわるが、彼は喚きちらしたり、ウンコを投げつけたりしながら、徐々に衰弱して死ぬ。
 
 漠とした美しき理想、時代の変化、家の崩壊、己の孤立と衰弱・・・ああ小生のことが書かれているみたいだ。なんとも心が痛む。

 思えば、半蔵は〈まことの道〉を制度や政治に求めたのがいけなかったのではなかろうか。彼はすでに日常生活のうちにそれが達成されていたのではなかったか。あるいは、歌の道にもとめるべきではなかったか。

 さらに思うに、皮肉なことだ。磐石の徳川体制という安定した社会において栄え始めた国学が、あるいはひょっとしてあの『大日本史』が、二百年の後に体制崩壊をきたすことになる初めの小さな種であったとすれば。

 
                                   
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